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2012年11月15日木曜日

夏の王国で目覚めない


ジャンル  :青春、本格ミステリ
ストーリー :7
構成    :6
文章力   :7
キャラ   :6
ミステリ度 :6

彩坂美月氏の作品は初めてだけれど、非常にライトな読み味で、心地よい透明感のある文章に引っ張られてぐいぐいと読ませてくれる。早稲田の文学部出身ということで、主人公の少女の心理描写に非常に共感を持って読めた。
ミステリとして魅力的なギミックなのだけど、本格としては浅め。
良くも悪くもライトすぎる作品で、殺人ゲームに巻き込まれた主人公らの心理描写がいちいち大げさ。おびえる表現も、驚く表現も。その割に対処や行動はすごく冷静かつ知的。ちょっと恐怖感を煽る描写がくどかったかな。
物語を牽引する謎は、一つ一つは簡単なものだけど、それを束にしてバンっと出してくるのが良い。塵も積もれば大きな謎となる。密室からの消失の謎や、作中劇の謎は、なかなか手応えがあるのでは?
ただ、いくつかは謎として機能してないほどに簡単すぎる。以下いくつか反転。
どう考えたってあれだけ集団を操作するにはゲームマスターは自分たちの中にいるでしょ。それが誰かってのも、伏線をサービスしすぎです(登場時、何故かみんなの顔と名前を聞かずに一致させてたからね)

一番の魅力はキャラ。一人を除いて捨てキャラがおらず、誰もに好感を持てます。ただキャラの魅力が爆発するのが館に着く後半からなので、エンジンのかかるが少し遅かったのが残念。