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2013年10月6日日曜日

五色の舟(津原 泰水)



ジャンル :SF
ストーリー:5
文章力  :7
キャラ  :5
物語の魅力:7
総合   :6

今回は、津原 泰水の「五色の舟」。
漫画版がコミックビームで連載中です。

コミックビームと言えば、ついに「放浪息子」が終わってしまいましたね……
少し消化不良な幕切れにみえて、そこが本当に残念でした。
永遠に浸っていたい世界観だったのにな。

さて津原 泰水ですが、
ミステリとして評価が高いのはやはり「蘆屋家の崩壊」でしょうか。
どんでん返しが良い感じのミステリです。


今回レビューする「五色の舟」は、『11 eleven』に収録されている短編SFです。
舞台は戦時中。
未来を言い当てる"くだん"という生物を巡る、見世物の一家の物語です。

主人公の一家は皆、何らかの障害をもっています。
腕がなく耳の聞こえない僕、脱疽で足を切った父親、
萩尾 望都の『半神』のように身体が二つあり、死んだ片方を切り取って生き延びた桜など。

国じゅうが惨憺たる状態にあって、生半可な涙や笑いが受けようはずもない。人々のまなざしを爛々とさせられるのは、もはや僕らのような、圧倒的に惨めな存在だけだった。


一家は見世物の報酬で生きてます。
父親は金になる"くだん"を欲しがりますが、見つけた時には軍に接収されていました。

その後、父親を好いたために一家の面倒を見てくれていた医者の犬飼先生の力添えで、
僕はくだんに会うことになるのですが……

(以下ネタバレ部分反転)

初め、くだんは「未来を言い当てる、人の顔をした牛」として噂されます。
ですが最終的に明かされるくだんの正体は、
人を別の世界へと運ぶ装置
なようです。

タイトルの"舟"とは、
その世界の歴史のことです。
くだんの言い当てる未来は、航路と表現されます。

文章中の言葉を交えると、


内海を巡回する航路から見た海上の一点は、船の前とも後ろともつかない。
しかしくだんの生まれた座標は、この世界からは未来と感じられやすい。

歴史は、単純な円環とは限らないが、ぐるぐると内海を巡ることと等しい。
内海からは出られない。正確に言えば、外のことを感知できない。
しかし航路は無数に存在する。
その様子を俯瞰し、意図的な乗り換えを行うために未来人が拵えた装置が"くだん"。

くだんは海上の一点を漂い、その傍を様々な船が通過する。
その内の一艘が、主人公達の世界。


僕の来歴も、なかなか叙情的な言葉で表現されて良い感じです。

  物心がついたときには押し入れの闇にいた僕の、最初の外の記憶は、河原を吹く風と、満天の星空と、生い茂った草の向こうで息をしているようにゆったりと沈んでは浮かぶ、大きな舟の影だ。
  朝になって僕を見つけたお父さんは、快く舟の上に導いてくれた。

僕は、桜とともに
くだんの力で舟を乗り換える(別の世界線へ移動する)のですが、
そのことについて僕は次のように語ります(以下ネタバレ)。

  散歩で土手を通るたび、ふたりして僕らの舟が浮かんでいた場所を見下ろす。今の僕らの、最も幸福で、最もせつない時間だ。
  心の置き所の問題だと、犬飼先生はお父さんに解説していた。だとしたら、くだんは僕らを運びきれなかったに違いない。運びきる前に死んでしまったのだ。だって僕らの気持ちは相変わらず、あの悲惨な世界にある。僕と桜にとってはやがて爆弾によって終わってしまう、短く虚しい世界だったのかも知れないが、こちらのかりそめの自分が死んだら、また心はあそこに戻っていくという、確信めいた想いから僕は逃れられずにいる。

原作では最後、漫画版だと一番初めに綴られる言葉が、
どんなに悲惨な世界でも、そこは僕の居るべき世界だったのだという僕の心根を表しているのでしょうね。

『色とりどりの襤褸をまとった、あの美しい舟の上に』




2013年1月30日水曜日

リカーシブル



ジャンル  :ホラー風ミステリ、(現代的な)村もの
ストーリー :7
構成    :8
文章力   :7
キャラ   :9
ミステリ度 :8
総合    :8


米澤穂信の2年ぶりの長編。

まず手に取ってみて一言、紙質が悪すぎる!!
表紙の装丁はすべすべで好きだけど、紙質はページを捲る手で鳥肌が立ってしまうほどに悪い!
発売時期も冬で、乾燥して手がかさつく季節。
佐藤亜紀信者でなくとも、これは新潮の編集を無能だと思わざるを得ないわー。

しかし米澤さんの筆力は流石でした。

レイモンド・チャンドラー曰く、一人称視点では主人公自身の魅力が伝わりにくい。客観的に描かれる周りの人間の方が人間性が垣間見れて共感しやすいそうです。

けれど今作、主人公ハルカの一人称語りなのですが、ハルカの魅力を十二分に感じることができました!
たぶん、ハルカがいつもの米澤キャラ(冷めた主人公)で終わるのではなく、米澤さんにしては珍しい「熱い主人公」としてラスト前向きな描かれ方をしていたからかな、と思います。
まあ、その後を考えれば救いのないラストではあるのですがw(←米澤さんも『ボトルネック』より残酷になったって言ってたw)


物語の舞台は、古い因習の残るうらぶれた不気味な町。
食指そそられるんだけど、肝心のトリック自体はそんなに目新しくはなかった。
でも最後「タマナヒメ」の謎を残していることも考えると、この小説はミステリやホラーと言うより、幻想小説風味のものなのかも知れません。

とはいえ、伏線は見事です。
第一章一行目からもう始まってますwそれを知ってても騙されるんですけどね。

ラスト、真実を知ったことでハルカは嫌いだった弟への想いを言い放ちます。
あの描写(ネタバレ反転:「(弟のことは)もちろん嫌いよ。だけど。だけどさ」「いちおう、お姉ちゃんだからね」と弟を助ける)は熱い!
あの想いの根底にあるのは、きっと同情じゃなくて姉弟愛だと信じてます!


日常の謎として面白かったのは、
「降るかな」
「晴れるよ。ぼく、知ってるもん」
という、弟が予知能力っぽいものの片鱗を見せた時のネタ。
帯の「弟は急に予知能力を発揮」に引きずられると、思わず次の文で笑っちゃうw


総評:姉と弟が、どこまでも愛おしい作品。やっぱり、物語のキーって漫画でも小説でも「キャラの魅力」なんだな。

以下、トリックの遠回しなネタバレ

メイントリックのネタは、東野圭吾の初期の作品で二作品ほど同種のネタがありましたね。
東野作品の元ネタは「game」という洋画らしいのですが(折原一が解説してたはず)、リカーシブルもそれに近いネタです。
邦画の「アフタースクール」なんかも近いかも。
ただ実際、"繰り返している"という意味では、「なるほど、このネタもこんな使い方ができたのかと感心させられました。

使い古されたネタもでも独特の調理法で料理されるとまた違った味が楽しめるのですね。


ここで今回の作品も含めて、『米澤作品長編ベスト5』を発表!

1. 折れた竜骨


2. 儚い羊たちの祝宴


3. ふたりの距離の概算


4. リカーシブル


5. 追想五断章


短編なら断然『満願』よ!

2012年12月28日金曜日

エヴァ新劇場版Qの感想とその他書評

・破ではビーストモードが衝撃的だったけれど、今回は鳥肌ものの描写がなかった。
 クジラくらいか。あの船、碇がないってのが良かったね。
・ストーリー・展開があざとい。マリはもちろん、クライマックスのエヴァバトルとか、やりたいこと見え見え。
・心理描写があまりに単調。シンジ君のウジウジがTV版や漫画版は共感できたのに、尺のせいか、苛立ってしょうがなかった。
・ホモ描写がくどい。カヲル回だからといっても、一般向けではない。
・一般人が出てこない非現実世界になったせいで、日常パート消失。
・映画に入りきれなかった最大の要因は、本編前の「巨神兵、現る」のせい。
 何あれ?舞城王太郎の言葉も、ジブリの特撮も、全然受け入れられなかった。

総評:つまらなかった……期待してたのに……
   とはいえやっぱアスカ最高!物腰から眼帯から、あとセクシーさが増してる!
結論:今回の映画はアスカが全て


最近の読書
 はずれ続きでした。
・『タンタンの事件ファイル 横浜「佐藤さん」殺人事件』鯨 統一郎
→・ABC殺人事件と同じオチかよ!  しかもラノベよりライト過ぎる書き方。
 つまらないギャグにありあえないキャラ。
 読み飛ばしまくって1時間で読めたけど、時間を無駄にした感は否めない。

・『埋もれた悪意』巽昌章
→犯人当ての古典的傑作と呼ばれているが、自分にはあまりに古すぎた。
 今ならよくあるネタでもあるし。
 クイズ:「AとBは顔がどう見てもそっくりだ。しかし『双子かい?』と聞くと、『違うよ』と答える。これは一体どういうことか?」
 意外な犯人を引っ張ってくるのは見事なのだが、その引っ張り方や、殺人動機がどうにも理解できない。ジェネレーションギャップか。
 同じ古典傑作なら、鮎川哲也の『達也が嗤う』の方がまだ良いと思う。
 ちなみに鮎川哲也の『誰の屍体か』『他殺にしてくれ』はマジで傑作だと思う。

・『龍の遺跡と黄金の夏』三雲岳斗
→本格ミステリじゃなくてラノベだった。
 浸透圧を使ったトリック自体は大規模で面白かったけれど、他の人間が通常経路で堀の向こう側に行かなかった理由が論破されてないと思うのだが。別にファンタジー設定もSF設定も構わないのだけど、解決がロジカルでなければ本格とはよびたくない。
 なによりいきなり「ドラゴン」とか出てこられても。。
 そしてオチ。ダニエル電池ってwそれくらい、龍狩り師が指摘する前に気づけよ研究チームw

2012年11月15日木曜日

あいにくの雨で


ジャンル  :青春、本格ミステリ
ストーリー :6
構成    :8
キャラ   :8
本格度   :7
衝撃度   :8

麻耶さんの青春ものは、必ずひねくれてる。まぁ青春ものでなくてもひねくれてるのだけれど。
切ないね。なぜ13章から始まるのか、麻耶さんが巧妙に隠したその意味に気付いた時、こちらまで無力感に苛んでしまいそうなラストが待っています。
(ネタバレ反転)誰が探偵役か?冒頭でいきなりトリック解明をもってくることで、まんまと誤認させられてしまいます。(ここまで)
生徒会の謀略戦とか、高校生らしさを奪いつつも高校生させてるところも麻耶さんらしい。雪密室そのものは正直イマイチだったけど、そこに主題がおかれていませんからね。むしろそれを囮にして明かされるクライマックスの衝撃こそ、この作品の、麻耶作品の魅力でしょう……

八つ墓村


ジャンル  :ミステリ、村もの
ストーリー :5
構成    :5
文章力   :5
キャラ   :3
ミステリ度 :7


大横溝の代表作だが、個人的には楽しめなかった。
理由は一人称視点のせいかと。あと古めかしい文章のせいで、読み苦しく、キャラへの魅力も感じられず。
古い因習の残るおどろおどろしい村での事件……こうしたジャンルを開拓した功績は間違いなく評価されるべきでしょう。実際に、津山三十人殺しなんて事件もあったんですね。ただもう、今となってはトリックさえも古い。
以下トリックネタバレ
動機隠蔽のための大量偽装殺人は「ABC殺人事件」的。
動機自体も、犯人に直接的なメリットがないが間接的にはある点は、先に読んでいた鮎川の「赤い密室」を思い出した。
殺人の構図を描いたのが犯人ではない点は、「Yの悲劇」に通ずるところがありますね。

メルカトルかく語りき


ジャンル  :短編、本格ミステリ
ストーリー :7
構成    :8
文章力   :7
キャラ   :8
本格度   :9


全てがある試みの下にある短編集です。
なんと、全話とも犯人不明で終わる!犯人不在、あるいは容疑者が限定的でない。現場に残された手掛かりからメルカトル鮎の美しすぎるロジックが全編通して冴え渡るのですが、完全なる解決は(意図的に)保留されます。鬼畜なる銘探偵、メルカトルだからこそ成り立つ短編集です。
ただ書き下ろしの「密室荘」はいまいちかな。あれはもう、メルカトルと美袋のかけあいを楽しむお話。「九州旅行」とかも、笑っちゃうくらいブラックなギャグが効いてますw
以下各話のネタバレ感想より反転
「死人を起こす」:音の聞こえ方の考察は少々頭を傾げますが、問題提起としては面白い。金田一少年の天樹原作者はこれをみて、香港の事件のトリックの一つを思いついたような気がする。
「九州旅行」:いつもは美袋かわいそーって思ってしまうのですが、これは掛け合いの面白さが上回りましたw偽ダイイングメッセージのロジックは面白いのですが、現代の科学捜査では死亡推定時刻が正確に割り出されてしまいそうな気もします。
「収束」:鐘が下ろしてある理由を、あそこまで論理的に解釈できるとは……。これだから麻耶さんはやめられねぇぜ!
「答えのない絵本」:これが読みたくて買ったのですが、あまり生徒パートが関係なかった気も。深く読めば、メルカトルが隠蔽しようとした犯人がわかるのだろうか?いずれにせよロジックに痺れる!
「密室荘」:後期クイーン問題ってやつでしょうか

夏の王国で目覚めない


ジャンル  :青春、本格ミステリ
ストーリー :7
構成    :6
文章力   :7
キャラ   :6
ミステリ度 :6

彩坂美月氏の作品は初めてだけれど、非常にライトな読み味で、心地よい透明感のある文章に引っ張られてぐいぐいと読ませてくれる。早稲田の文学部出身ということで、主人公の少女の心理描写に非常に共感を持って読めた。
ミステリとして魅力的なギミックなのだけど、本格としては浅め。
良くも悪くもライトすぎる作品で、殺人ゲームに巻き込まれた主人公らの心理描写がいちいち大げさ。おびえる表現も、驚く表現も。その割に対処や行動はすごく冷静かつ知的。ちょっと恐怖感を煽る描写がくどかったかな。
物語を牽引する謎は、一つ一つは簡単なものだけど、それを束にしてバンっと出してくるのが良い。塵も積もれば大きな謎となる。密室からの消失の謎や、作中劇の謎は、なかなか手応えがあるのでは?
ただ、いくつかは謎として機能してないほどに簡単すぎる。以下いくつか反転。
どう考えたってあれだけ集団を操作するにはゲームマスターは自分たちの中にいるでしょ。それが誰かってのも、伏線をサービスしすぎです(登場時、何故かみんなの顔と名前を聞かずに一致させてたからね)

一番の魅力はキャラ。一人を除いて捨てキャラがおらず、誰もに好感を持てます。ただキャラの魅力が爆発するのが館に着く後半からなので、エンジンのかかるが少し遅かったのが残念。

147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官


ジャンル  :サスペンス、刑事もの
ストーリー :6
構成    :5
文章力   :6
キャラ   :2
ミステリ度 :5


女流乱歩賞作家、川瀬 七緒氏の作品
氏の作品は初めて読んだけれど、リーダビリティは低くないと思う。といっても無意味に読ませる描写は多くて飽きてきやすい。
リーダビリティの原動力となる「謎」と「法医昆虫学」はとても良かった。ってか法医昆虫学目当てで読んだわけで。けれど小説的面白さという点は、残念な結果だった。
まずキャラに魅力がない。刑事の岩楯と法医昆虫学者の赤堀、その二人の主人公視点で展開していくのだけれど、二人ともが皮肉屋で、自分勝手で、読んでいて楽しくなかった。この二人のフィルターをかぶせた他の登場人物の印象が全て等しく貶められていて、エンターテイメントとしてはうんざりしてくるのだ。
三人称の中に主人公の感情・視点も混ぜた形式なのだけど、少しレイモンド・チャンドラーの言葉を引用してみる。

一人称形式は制約が多くて扱いにくい。「わたし」は思ったことを洗いざらいぶちまけることになり、かえって(人物的)厚みが出にくいのだ。どんな心の動きもすべて平板になってしまう。
(中略)
ミステリーでは特に著しいことなのだが、最後まで一人称で押し通すことはできても、主人公は妙に輪郭がぼやけてしまうのである。どんなにうまく料理しても、結局、のっぺらぼうの「わたし」に還元されてしまい、くじけず頑張る男という平凡な印象がうっすら残るだけなのだ。三人称で性格描写された脇役の方がはっきりと印象に残ってしまう。
(中略)
視点をどこに置くにしても、人物を単純化しすぎるのは避けるべきだ。どんな人物でも完璧に描写しようとしたら一生かかっても足りないのは明らかだから、取捨選択を避けられない。が、割り切りすぎると絵空事になってしまう。自分自身にも自分の任務にも全く疑いを持たない男がいたら、馬鹿か聖人か、とても正気とは思えない。人類最大の特徴は自己不信ではあるまいか。だから私は、誰から先にふっとばすかということ以外に何の迷いも悩みもない主人公には、ほとほと愛想が尽きるのだ。

思うに、川瀬氏は詳しく描写しすぎかと思う。もっと読者の想像にゆだねて欲しい。相手の何もかもを主人公が推し量ってしまい(しかも悪く)、読んでて窮屈だった。
構成的にももっと削れるエピソードがあったと思う。長くするならもっと虫の話をして欲しかったなぁ。正直これを読むなら、参考文献の虫の本を読んだ方が有意義だったかと。

あとミステリとしては、推理ではなく犯人が全部勝手にばらしだすオチは面白くない。
何よりラスト、無駄に少年が死んだのは不愉快……だめな映画を盛り上げるために、簡単に命が捨てられて(ry
続編がありそうな終わり方だったけど、正直読まんだろうなぁ……

2012年6月15日金曜日

悪意


ジャンル  :本格推理、警察
ストーリー :7
構成    :8
文章力   :5
キャラ   :6
本格度   :8
満足度   :7


東野圭吾のどんでん返しものの中では劣るかな。
詳しくは後日

ある閉ざされた雪の山荘で


ジャンル  :本格推理、ミステリ
ストーリー :8
構成    :9
文章力   :6
キャラ   :8
どんでん返し:9
満足度   :9


東野圭吾はやっぱすげーわ。
帯の文句が「超大技炸裂」ってw
いやまぁ騙されたけどね。あんなあからさまに「〜の独白」だなんて書いてあんのにね。
至福の時間でしたよ。
そして何より、ドラマとしても、感動しちゃいましたよ、ラスト。
あんな安い芝居に……おっと、ネタバレか?
いやいや、大丈夫大丈夫。
この作品のおもしろさは、最後の最後まで事件が登場人物(全員劇団の役者)たちの演技なのか本当の殺人なのかわからないところにあるからね。
いやほんと、〝超大技炸裂〟だね!

むかし僕が死んだ家

 

ジャンル  :本格推理
ストーリー :9
構成    :9
文章力   :7
キャラ   :7
本格度   :9
満足度   :9

東野圭吾の作品の中で、今のところ一番好き&最高傑作だと思う。
登場人物は2人だけ、と謳ってるけど、実際脇役はたくさん出てきます。
幼い頃の記憶がない女性。彼女の元彼が同伴して、記憶の手掛かりだと女が言う寂れた別荘地へ。そこは電気もガスも通ってないのに、何故か生活の痕跡があった。
一体その家は何なのか?そこに残されていた日記を書いた少年は?

記憶がフラッシュバックしてゆくのではなく、あくまで推理から記憶を手繰ってゆく展開が素晴らしい。
またどこかホラー染みた雰囲気作りに成功していて、全編通して薄気味悪さが漂っているのもグッド
無味で簡素な文体も、今回は無駄を省くことによって生まれる恐怖感&徐々に全貌が明らむ恍惚感を表面化させることに成功していた。
ともすれば幻想ミステリーになりかねない雰囲気を醸しながらも、しっかりとロジカルに導き出される本格推理が素晴らしい。本当に凄い。売れっ子は伊達じゃない!

そして結末も良いね。予想外の真相は勿論、青春ものとしても、あの何とも言えない感じがね。

そして扉が閉ざされた


ジャンル  :本格推理
ストーリー :7
構成    :10
文章力   :8
キャラ   :6
本格度   :9

さすが、岡嶋二人は読みやすい。無駄がない。
核シェルターに閉じ込められた男女4人が、3ヶ月前に自分たちの仲間に起きた殺人事件について推理しながら脱出を試みるというお話。
このあらすじだけでもうね、わくわく!購入してすぐ読み切りましたわー

一切の幻想味を排した本格推理もの、ってのが自分的にはちょっと残念だった。内容的には満足だったんだけど、カーっぽさがあっても萌えたかな。
とはいっても、リアリティ追求の本格推理はやっぱ気持ちいい。
ロジカルに進む話、鮮やかなどんでん返し、素晴らしきトリック。
これだけ揃っても何かもやもやするのはたぶん、クソビッチな被害者のせいだろう。

2012年5月30日水曜日

傍聞き


ジャンル  :短編ミステリ
ストーリー :7
構成    :9
キャラ   :7
文章力   :8
ミステリ巧さ:9
総合    :8

4編全て、素晴らしきどんでん返し含む佳作。
さくさく読めるリーダビリティの高さもgood!
ただ、(個人的に)キャラにはまり込めなかったのが残念。魅力的じゃないんだよなぁ。

書店員のお勧め作品は9割が外れだけど、これは当たりよ。

ゆれる


ジャンル   :ヒューマンドラマ
ストーリー  :7
構成     :7
表現力・センス:9
切なさ    :10
総合     :10

なんか、自分のことが少し書いてあるんだ。
10点というのはつまりそういう意味。綴られた、現代語バリバリの心理描写がもうね、心に染みる。
ただ最後の香川照之の続きは蛇足。

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術



ジャンル  :ミステリ、マジック
ストーリー :5
構成    :10
文章力   :測定不能
ミステリ度 :6
価値    :10
総合    :評価不能

衝撃のラスト、とはこの本のための形容。
ストーリーとか、この際どうでも良いんです。いや、むしろこの仕掛けのために作ったストーリーがこのレベルというのは、やはり10点あげても良かったかも知れない。

こんな本を作ってしまった泡坂さんに脱帽だぁ!

日蝕



ジャンル  :中世、擬古文ぽい、神秘体験
ストーリー :6
構成    :6
表現力   :9
何か凄い度 :9
総合    :8

とにかく、難読漢字ばかり使ってお堅く表現してるから(漫画的な)超常現象がほんとに崇高な神秘体験ぽく読める、って感じが衝撃的だった。
三島さんの金閣寺を読まなくては。
まぁ、俺の読書量が少ないからこの作品を馬鹿に出来ないだけなんだけど、平野さんはインタビューとか見てても好きだし、三島にしろ泉鏡花にしろ佐藤亜紀さんにしろ、まだ20ちょっとの俺には、古いイメージしかないわけで。
懐古主義嫌いなんで、俺的にはこの作品で十分だし、素直に賞賛したい。

今後

レビュー待機(順不同)
・佐倉淳一「ボクら星屑のダンス」
・ブータンの紀行本
・篠田節子「聖域」「弥勒」
・佐藤賢一「王妃の離婚」

鋭意読書中(順不同)
・島田荘司「斜め屋敷の犯罪」
・原田マハ「楽園のカンヴァス」
・上田早夕里「華竜の宮」

・クリストファー・プリースト「逆転世界」
・北森 鴻「狐罠」

・綿矢りさ「蹴りたい背中」
・岡嶋二人「99%の誘拐」
・西澤保彦「解体諸因」
・ポール・オースター「ムーン・パレス」
・パオロ・バチガルピ「ねじまき少女」
→文庫発売当初に買った時、amazonレビュー3件くらいだったのに。悪評ばかり、積み本してたら腐ったか。

・西尾維新「クビキリサイクル」
・ディキンスン「キングとジョーカー」

他、虐殺器官、ミミズク、耳刈ネルリ、日本三大奇書、etc

人間の脳の容量的に、一生に読めるのは30万冊
でも、一日一冊読んでも、2〜3万冊しか読めない。
小説も漫画も映画も、良い作品に出会いたいものだ。

嘘と少年



ストーリー  :6
構成     :6
ラストの衝撃 :5(ミステリとして読んじゃ駄目)
表現力    :4(自然描写は素晴らしかった)
キャラの魅力 :3
総合     :5

オチがなぁ。帯の「予測不可能、驚愕ミステリー!」に騙された。
ミステリ……うーん、確かに犯人当てはミステリ的だけど。伏線もしっかりあったし。
でも読んでて、「まさかこんなオチじゃないよね……ミステリなんだし」って、もろにそうだったwこれじゃファンタジーですらなく、ただのオカルトだよ。青春ものでも、多分ない。
山での冒険の描写と、サクサク読める点は高評価。

鏡の影

ジャンル         :中世、ちょっとだけファンタジー
ストーリー        :5
キャラ          :7
文章センス      :9
ペダン      :7
総合      :6

平野さんの「日蝕」と一悶着あり、新潮社と決別したらしい佐藤亜紀の佳作
日蝕とは似ても似付かない気がするけど、まぁ本人があんな風にブログで言うのなら、少なからず真なところがあるのかも。
ただ、個人的には「日蝕」の方が好きだった。少数派かも知れんが。

ペダン味がイイ感じで効いてる。
歴史未履修の自分には読みにくい部分もあったけど、その分調べる楽しみが出来て良かった。おかげで佐藤賢一とか読み漁るきっかけになって。

この小説の難し所は、文章のテンポ。奥泉光と同じ感じの、一文がやけに長いあのリズム。
合わない人多そう。俺も最初は投げ出しました。
けれど今では見事に毒されて、この文章テンポの中毒者になっちまったよ。洗練された表現力、言葉に対する美意識さえ伝わってくる。
捻くれたキャラ同士の掛け合い、毒のある言い回し、本当に綺麗。
ただ正味な話、ストーリーそのものが微妙。
世界を変える「一点」を探す、とか、ゴーレムのemethとmeth、とか、wktk要素満載だったのに。処女懐胎オチって必要?
シュピーゲルグランツの妖しさに比べて、アルブレヒトとか微妙なキャラ過ぎだよー