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2014年1月25日土曜日

妖女伝説 星野之宣(漫画・全2巻)



ジャンル  :ホラー、歴史
構成    :9
画力    :7
表現力   :8
キャラ   :7
ホラー度  :9
ミステリ度 :9
総合    :8

素晴らしかった。

1巻はホラー色のある壮大な歴史ロマン(エジプト・ローマ)を楽しめる。
一方短編のみの2巻は、まるで『20○○年 海外ベストミステリー選』でも読んでいるかのようにミステリ的文脈で"毒"と"どんでん返し"が満ちた粒ぞろい。
歴史とホラーの究極の融合が、きめ細やかな筆致で描かれた良短編集でした。


自分は世界史の授業はいわゆる「未履修」なんだけど、
それでも『アラビアのロレンス』とか映画で見たし、佐藤賢一の歴史小説もよく読む程度には歴史好きです。

この作品は基本敵に歴史漫画であるのですが、
じゃあ歴史の知識がないと楽しめないの?というとそんなことは欠片もありません。
あくまで有名どころがベース。知ってる人には「芸が細かく」、知らない人には「丁寧な説明で」描かれています。


マイベスト短編
第三位「メデゥサの首」
→ストーリー構成・表現・オチの全てが素晴らしい!
舞台が現代のため歴史音痴でも問題なし。メデューサという超有名な題材ですが、その結末は超ブラック。
ホラーでありながら米澤穂信の『儚い羊たちの祝宴』の一篇にありそうな鮮やかなオチ。ホラーとミステリはやはり相性抜群です。


第二位「日高川」
→東野圭吾の『悪意』を思わせる度級のどんでん返し!
話の雰囲気も抜群で、読み手の予想を鮮やかに裏切ってくれる痛快ホラーです(個人的にはミステリと呼びたいw)。


第一位「ボルジア家の毒」
→チェーザレ・ボルジアとレオナルド・ダ・ヴィンチという、豪華な登場人物たちが織りなす壮大な短編劇!
ボルジア家に伝わる毒薬・カンタレッラとは何か?レオナルドが毒の保管庫で見たのは……!?
毒の正体の凄まじさと、レオナルドがチェーザレの妹・ルクレツィアに送った絵の意味。冴え渡るオチが鳥肌ものです。
この話を読み終えて頭に浮かんだのは、恩田陸の『蛇行する川のほとりで』の一節でした。


    本質を掴め、と美術の先生はいう。
    見たままのモノを描くだけでなく、本当に画を描きたいのならば、対象の本質を掴め、と。
    なんともご立派で、ごもっともな、しかしよく考えてみると何も言っていないアドバイス。
    これを言い換えると、見たままのモノは描かなくていい。
    見えるものをそのまま描くことが、単なる陳腐な模倣や対象への侮蔑になることもある。
    だから画家は、むしろ見えなかったものを描いてきた。
    昔の画家は、何かを見ながら天使を描いた。
    何かの後ろにいる天使、何かの内側にいる天使を。
    おそらくそれは、凄まじく邪悪なものだったに違いない。
    そのあまりのおぞましさに、画家達はありのままにそれを描くことができなかったのだ──

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