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2013年9月25日水曜日

奇面館の殺人



ジャンル :ミステリ、クローズドサークル
ストーリー:4
読み味  :5
キャラ  :3
謎の魅力 :7
驚愕度  :6
総合   :5

綾辻 行人の長編を読んだのは初めて。
でも他の館シリーズのネタは大体知ってます。

連作短編「どんどん橋落ちた」は読んだことがあります。


あとミステリじゃない短編(下手物好きの夫婦が、最後には自分を食べちゃうという話)と、
ゲーム「TRICK×LOGIC」のSeason2で有栖川と合作してたやつ。



あとは、アニメで「Another」



ミステリ好きのくせに綾辻作品をこれだけしか読んでないのは、
文章が淡泊かつ説明的すぎて、いかにもミステリのためだけの文章って感じが強く、
食指があまり動かないからです。

ミステリもエンタメである以上、面白い文章 or 魅力的なキャラで読ませて欲しい。

伊坂も道尾も辻村深月も、あまり好きな作家ではありませんが、
いざ読み出せば軽快でユーモラスな文体に惹かれて、気付けば読み終えている。
        鴉の親指(道尾 秀介):オーダーメイド殺人クラブ(辻村深月)

あるいは麻耶たんのような癖の強い妙なペダン調皮肉文章だとか、
皆川先生の重厚濃密な世界だとか、
米澤さんの親しみやすいキャラだとか、

ミステリなんだから"魅力的な謎"で話を牽引してくれるのは当然、
それプラスαが必要な時代でしょう。

しかし綾辻さんを始め、
有栖川・法月など、過去の作家たちにはその魅力がない。

館シリーズラスト2の「奇面館の殺人」
自分も周囲も仮面を被ったクローズドサークルという設定には最高に萌えます!
それだけで「うひょー!」です。

が、長い割には死人は一人だけ。
犯人の狙いが被害者一人だけだと考える容疑者達には、緊張感もほとんどなし。
丁寧すぎる描写ばかりで進行も遅く、読むのが苦痛な状態に……。

ミステリ的には良いのです。
"仮面+首斬り死体"から入れ替わりネタをミスリードさせ、ストンと落とす。
けれどあまりに綺麗に落ちすぎて、「え?こんな地味なトリックでおしまい?」と、読まされてきたページ数を振り返る。。。

せめてあと一つでも、例えば魅力的な文章、例えば魅力的なキャラがあったならなぁ……

以下、トリックのネタバレ(反転)

犯人が何故、客全員に鍵をかけた状態で仮面を被せたのか?
それは入れかわりのためではなく、
被害者ともみ合った際、顔に抵抗傷を受けたから。

被害者の指には犯人の肉片が付いた。だから被害者の全指を切断し、ミキサーにかけた。


密室については、抜け道の仕掛けを利用した。

外で待ち構える柔道家の娘(メイド)に気付かれないように部屋から脱出するには、犯行現場の外にある内線を使って寝るよう指示する他ない。
そこでしかたなく抜け道を使い一度外に出て、電話で指示した後に犯行部屋に戻り、鍵を開けて脱出した。
抜け道の鍵は被害者の仮面。
だから犯人は、仮面をとるため被害者の首を切断した。

作中、人物の呼び分けは仮面の名前か職業でされていたが、
これは、犯人を含む容疑者全員が同姓同名であったからである。
だから互いの呼び分けを、名前以外でしなければならなかった。

密室の謎から、犯人は館に詳しい人物。
一種の叙述トリックにより、館の2代目当主の存在が隠されていたが、犯人はその2代目だと断じる探偵。

容疑者の一人が近視でコンタクトをしていることを会話から推理。
「コンタクトはすぐに慣れるよ」と言えるのは、自分がしているから。
彼は仮面を被らされた後も、遠くからものをみれている様子だった。
しかし仮面を付けたままコンタクトはできない。
彼はコンタクトをしたまま眠ったと言うが、犯人だからではないか?

決め手は雑誌のロゴ。
被害者書斎の雑誌は、被害者がロゴに手を加えた世界で唯一のもの。通常のロゴと色が違うのだ。
雑誌について知っていると言った犯人は、その雑誌のロゴの色を間違えて答えた。館にいた証だ。

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